名前を教えてあげる。
「確かに感情的なところはあるよ。
でも、恵理奈は孫だぜ?
あの人、子供好きだし、実際に恵理奈を見たら喜んでくれると思う。
預けている間、美緒はお腹の子とゆっくり過ごせばいいよ?」
名案を思い付いたように、明るくいう順に美緒は、腑が煮えくり返る思いがした。
「あのね!子供が好きな人が400万払ってでも中絶させようとするわけ?
あの人は恵理奈のこと殺して、私と順を別れさせようとしてたんだよ?
孫だなんて思っているわけないじゃん!」
美緒は力任せに、手元にあったヘアブラシをガシン!とテーブルに打ち付けた。
その勢いで立て鏡が倒れて床に落ちた。
「……」
普段の美緒とはかけ離れた荒々しい動作に、順は口を噤んだ。
「順はあっちの部屋で寝て!私はこっちで寝るし………同意書書いておいて。絶対に生まないから!」
美緒の言葉に、順は無言で立ち上がった。
闇の中で何度か、隣の部屋にいる恵理奈の泣き声を聴いた。
その度に、順の囁くような声も聴こえてきた。