名前を教えてあげる。
去年の夏は、順と三浦海岸へ遊びに行った。
付き合い始めて3ヶ月目だった。
順みたいなかっこいい男の子と海に行くなんて……
嬉しくて楽しくて、本当にあの頃は毎日が有頂天だった。
「…そういえば、あのミントグリーンのビキニ!あれ、学園に置きっぱにしちゃった……
結局、あの時着ただけだ。高かったのにもったいないな…
それにしても1年後にこんな風になってるなんて、神様もビックリだよね…」
独り言を言って美緒は苦笑した。
いつのまにか洗濯もしてあって、軒先に干してあった。
(順は、何時に起きたんだろう……?)
順は、何にしても手際がよく
『いつの間にか』やってしまう。
ただし、料理は不得意分野で、美緒のほうがまだマシだった。
崩れた目玉焼きが、キッチンでの格闘を物語っていた。
恵理奈はまだ寝ているから、朝食を食べると何もすることがなくなった。
空白の時間。
コーヒーカップを両手で持ち、ペタンと座って家の中を眺めた。
グレーのカーペットが敷かれた六畳二間は、まさに「愛の巣」だった。
テレビ、冷蔵庫、炊飯器。洗濯機。電子レンジ。
最低限の家電製品。
コーヒーメーカーは、順のリクエストで買った。