名前を教えてあげる。
『こぐま組に進級してから、エリなん、すごく変わっちゃったから…
前はあんなに活発でリーダーみたいな存在だったのに、今はいつも教室の隅っこに1人ぼっちでいるって………それに』
紀香は一瞬、言い淀んだ。
『なぜいつも同じ服ばかり着せるの?それに靴だってボロボロじゃん。
エリなん、それで男の子達にからかわれて泣いちゃったんでしょ?』
それは1週間ほど前、担任の先生から電話があり、聞いていた。
「ああ…お金なくって…こうちゃん仕事辞めちゃったから…」
成長期だというのに、恵理奈の新しい服や靴など半年くらい買っていなかった。
この頃は安価な可愛らしいものが量販店に行けば、いくらでもある。言い訳だった。
恵理奈のことを構うと光太郎が激しく嫉妬するようになってからは、Gパンに2枚のTシャツをローテーションで着せていた。
担任の先生には、ちゃんと洗濯してあるんで、大丈夫だと強気で告げ電話を切ったのだ。
『そっか……お節介言ってごめん。怒らないでね…
あ、そあらが起きた。おしっこ?美緒、悪い、電話切るね!
そあら、4歳なのに1人で夜、トイレ行けねえんだよ。
めんどくせえ~』