名前を教えてあげる。
ヒロの提案、順の野心
「うああ!あっ甘過ぎ!」
レインボーブリッジを一望出来る素晴らしい眺めとモダンなインテリアの部屋で美緒はつい、場にそぐわない声を出してしまった。
「この甘さがいいんじゃん」
順は何食わぬ顔で、チョコレートハニーヌガーを頬張る。
「ガキの頃から、大好物だもんな」
コーヒーを啜ったあとに、ヒロが笑う。
ヒロは3日前に日本の地を踏み、2週間ほどこの部屋に滞在する予定だった。
パリッとした水色のカッターシャツにグレイのスラックス。胸ポケットには紫系のチーフが差し込んである。
相変わらずクールなヒロだったけれど、美緒が2人目を身籠ったと知ると、
手を額に当て、「オウ!」と言って頭を振る仕草をした。
「なんだよ〜、それ?祝福しろよなあ」
順が不満顔をすると、
「お前なあ、少しは控えろ!」
ヒロは1人掛けのソファから腰を浮かし、右手を伸ばして順の股間を掴む真似をした。
「わあっ、やめろ!」
順は仰け反り、ソファからズリ落ちそうになった。
笑いながらも、順の顔を覗き込むようにして訊く。
「祝福するさ。でも金は大丈夫なのか?ちゃんと生活出来るのか?」
甥を心配する叔父の顔になった。