名前を教えてあげる。
「…ヒロが言ってたこと。
金に関してはいつか返すつもりだけど。やっぱ恵理奈のことはちゃんと報告しなきゃならないかもな。
恵理奈にとっては、たった1人のお祖父ちゃん、お婆ちゃんになるわけだから」
順は部屋の奥に目をやった。
広々としたキングサイズのベッド。
ぴっちりとベッドメイクされたシーツの上には、仰向けの恵理奈が人形みたいに転がって、ご機嫌に手足をバタつかせていた。
「……やっぱ大学に行きたいんだ…」
ナイフとフォークの手を休め、順がポツリと言った。
「……え?」
「今の生活は楽しいよ。
職場は皆、いい人達ばっかだし、恵理奈は可愛いし。美緒は最高の奥さんだし…
だけど、このままじゃ、ずっとあのアパート暮らしだ。俺はそれで終わりたくない。
美緒に大きな家を買ってやりたい…
少しでもリッチな生活をさせてあげたい。
海外旅行にも連れて行ってあげたい。
ヒロの言う通り、アルバイトで、がむしゃらに働いたって無理だ。勉強して国家資格取って、高みを目指すのが正攻法だ。
確かに1度チャンスを逃したけど、今なら間に合う。自信はある」
「それって、医者になるってこと?」