名前を教えてあげる。
[気温が下がってきたから、そろそろ順の長袖のものを出しておくように]
[幸水が出回りはじめています。
あの子の好物だから、食べさせてやって下さい]
お節介なメールが来るたびに、美緒は返信に苦労した。
[美緒さん。あなたはまだ18歳ですが、もう母です。あなたのメールを読むたびに、こちらが恥ずかしくなります。
もっと漢字を勉強なさい。
『えりな、かぜぎみみたいです』
幼稚園児のメールかと思いました]
こんなメールが着たときには、本当に心臓が破裂しそうになった。
確かにそうだ。
でも、メールはメールだ。おばさんとは感覚が違うとしか言いようがない。
『ウルババ』とは、うるさいババアの意味だ。
さすがに順には内緒だったけれど。このくらいしないと気が済まなかった。
[美緒さん。
今度のお茶会で、あなたの手作りのクッキーをお出ししたいの。
あなたの良いところを皆様にお見せするチャンスですよ。
材料は育子さんが用意してくれますから、あなたは来るだけで構いません]
初めてのお茶会から、2週間。
春香からのメールを読んだ美緒は恵理奈を抱いたまま、しばらく呆然とした。