名前を教えてあげる。
ははは。
なぜか笑いがこみ上げてきた。
こんなの、笑うしかない、と思った。
二度と嫌だったのに、またあのお茶会に行かなくてはならないなんて。
しかも、クッキーを作れだなんて。焼き菓子なんて作ったことはない。
三田村学園でも、もちろんキッチンはあったけれど、児童の立ち入りは事故防止の為、原則禁止されていた。
(水道の水を飲む目的ならOK)
たまに、菓子作りの好きな女性指導員が「ケーキ教室」を開いたりすることはあったが、美緒は1度も参加しなかった。
(モサモサしたスポンジと、甘すぎるクリームがあまり好きではなかったから)
だから、いきなりクッキーだなんてわれても途方にくれてしまう。
(これって、嫌がらせだよね?…でも)
ヒロのマンションで暮らした3ヶ月間。有り余る時間を有効に使おうとネットで検索して、様々な料理にチャレンジしてみた。
その結果、割と自分にセンスがある、と気が付いた。
豆腐ハンバーグと治部煮は、その時覚えた美緒の得意料理だ。
今は、育児に追われてろくに料理していないけれど、恵理奈が幼稚園に入って時間が出来たら、手間暇かけてフランス料理みたいなものも作ってみたかった。
本を見ながら、温度と時間を守れば、クッキーなんて簡単に出来そうだ。