名前を教えてあげる。
(はいはい。お前とは育ちが違うんだ、とでも言いたいわけね?)
美緒は平静を装った。
こんなおばさんのいうことなんか、どうでもいい、と思いつつも、比べられるとやっぱり傷ついてしまう。
春香のそばに立つ彼女の表情は、反対に固かった。
目尻が釣りあがった目は狐を連想させ、色素の薄い茶色い瞳で美緒を凝視する。
まるで狙いを定め、挑むように。
日本人の父親似なのだろう。
クリスティンの顔の作りは平坦で肌が白い分、そばかすが目立つ。
白いカチューシャでおでこを出し、背中の中ほどまである黒髪は剛毛で重たそうだけれど、いかにも西洋受けしそうだ。
彼女がモデルのような秀でた容貌ではなかったことが、美緒に安心感を与えた。
「…美緒といいます。よろしくね!」
クリスティンが緊張している、と思ったから、わざと砕けた口調で言った。
すると、クリスティンは両手をペンギンのようにつっぱらかせ、ひらり、と春香の方に身を翻して訊いた。
「…おばさま。私、この方とお外でお話しがしたいの。お庭に出ても良くって?」
その芝居がかった動作と言葉使いに美緒は唖然とした。