名前を教えてあげる。
17歳の夏休み。
順と一夜を過ごし、朝、手を振って別れた。
「バイバイ」と言った後、美緒は猛烈な腹痛に襲われ、その場に蹲った。
なんだろう…この痛み?
生理痛に似た、下腹が攣るような…
分かった…これは、受精痛だ。
卵子と精子が結びついた時の痛みだ。
恵理奈がお腹に宿った瞬間だ…
この時以外に考えられない…
美緒が夢の中で納得した時。
ハッ、と目が覚めた。
隣には、男が豪快ないびきを掻いて寝ていた。
「あっ…」
今、寝ている場所が自分の家ではないことに気付く。
手足を伸ばしても、何も当たらない広いベッドに薄い掛け布団。
使い慣れた寝具ではなかった。
ここはラブホテルだ。
タケシと酒を呑んだ後。
ほろ酔いの光太郎にせがまれ、車で入れるところを適当に見つけた。
2時間だけの約束は、絶対に破られるだろうと覚悟していたけれど、やはりそれだけでは済まなかった。
行為が済んだあと、光太郎が美緒の頭をいつまでも撫でてくれたせいで、いつの間にか美緒まで寝てしまった。
「今、何時なんだろう…」
時間の感覚が全くなかった。
部屋の中は雨戸を閉めたような暗さだったから、日の出前なのかもわからなかった。
美緒はヘッドボードに手を伸ばし、自分のスマホを探った。