名前を教えてあげる。
「あった……」
手探りで見つけたのは、光太郎のものだったけれど、時間を見るだけだから、構わず暗証番号を打ち込む。
お互いに隠し事はしない約束で暗証番号もオープンにしていた。
恵理奈を真ん中にして美緒と光太郎がピースサインをする壁紙ーーー
その写真をバックに浮き出た『7:45』という数字を見て、美緒は一瞬息が止まった。
光太郎は8時半までに茅ヶ崎の現場に行かなくてはならない。
8時に迎えの車が来ると、光太郎に仕事を紹介してくれた堀田タケシが言っていたではないか。
さあっと頭から血の気が引く思いがして、
「こうちゃん!起きて!ねえ、早く!」
掛け布団を引き剥がし、光太郎の身体を思い切りの力で揺さぶった。
ふがっといびきが止まり、
「なんだよ….美緒…俺もう出涸らしだって。もう一戦交えるならお前が上になれよ…」
上半身裸の光太郎が寝ぼけ眼をこする。
「馬鹿なこと言ってないで!仕事よ仕事!8時に茅ヶ崎でしょ⁈
あと15分しかないの!」
「……うわあっマジか?やっべえ!」
美緒の叫びに、ようやく事態を飲み込んだ光太郎が跳ね起きた。