名前を教えてあげる。


生まれた時から両親のいない美緒には
、親に対する愛情の掛け方がよく分からなかった。


「まあ、お茶会は休まずにやれてるみたいで、良かったよ」


安心したような笑顔で美緒に報告する順に「良かったね」と返しながら心の奥では、(マザコンじゃね?…)と思ってしまう。


そんな風に思う自分が冷たい人間なのかと悩んだりもする。

家族3人での平和な生活を乱すただ1つの存在が順の母・春香だった。


それに加えて、恵理奈の成長に伴って美緒の心を暗くするものがあった。


アパート前の公園に集うママ友グループ。美緒はそこに、入り損ねてしまったのだ。


その公園に最初は美緒だけしかいなかった。
ある日、恵理奈をバギーに乗せてひなたぼっこをしているところに彼女達が現れたのだ。

そして、新参者のくせに、ベンチと木陰を占領するようになった。


恵理奈より少し上の月齢の赤ちゃんとその兄弟の幼児を連れたアラサー4人組は、とても排他的で最初から美緒を無視する態度を取った。


彼女達は、母親にしては若過ぎる美緒に対して、勝手なストーリーを作り楽しんでいるようだった。


< 216 / 459 >

この作品をシェア

pagetop