名前を教えてあげる。
「えっ…ここなの?」
美緒は目を丸くした。
星野哲平が指定してきた待ち合わせ場所は、青々とした緑の柴のグランドだった。
[ストレス発散の方法教えてやる。
ゆめが丘公園北門に15時。
なるべく動きやすい服装で。スニーカー限定。スカート不可]
メールで哲平に指示された通りに、パーカーにGパン、スニーカーを履きでやって来た。
ゆめが丘公園は、広大な敷地内に体育館や運動場を抱え持つ市内で1番大きな公園だ。
桜の木がたくさんある。来るのは初めてだった。
(春になったら、順と恵理奈、3人でお花見しに来ようかなあ…)
広々としたグランドでは、低学年の小学生達が揃いのユニフォームを着て、サッカーの練習をしていた。
試合形式らしい。秋の高い青空の下、どの子供もボールを追いかけ、必死に駆け回っている。
伸びやかで微笑ましい光景だけれど、知らない子供をいつまでも見てても面白いわけがない…
哲平はどこなんだろう……
美緒が辺りを見回した時。
「あっ!」
サッカーをする子供達の中に、黒いトレーニングウエアを着た細身の男がいた。
なで肩で猫背気味のシルエット。