名前を教えてあげる。
光太郎自身も親1人子1人の母子家庭で、お金に苦労する母親の背中を見て育ったという。
ーー子供が5人ぐらいいて、わいわい言ってる賑やかな家庭に憧れるんだ。
まあ…俺の給料じゃ5人はちょっと無理だけどさ。
厳しくて優しい、でも頼れる父になるのが夢。
だから、美緒に子供がいてなんか嬉しい。
今度は恵理奈ちゃんも一緒に飯、食いにいこう……
初めてのデートで、ハンバーグを食べなから、光太郎はそう言い、美緒は感動して泣いてしまった。
光太郎の夢は、美緒の夢と同じだった。
美緒も優しくて頼れる夫と可愛い子供達のいる家庭が欲しかった。
半ば、諦めていた夢ーーーー
出逢って1週間目に、美緒と光太郎は結婚の約束をした。
光太郎が会社の寮を出て、美緒の住む市営団地に転がり込んだのは、それから3日後のことだった。