名前を教えてあげる。


「あれ?煙草って、18いいんだっけ?
ハタチからじゃなかった?」


指の間に新たな煙草を差し込み、哲平はすっとぼけた口調で、にやにやする。


「私、もう母親なんだよ!
少子化対策に貢献してるんだから、いいじゃん!煙草くらい吸わせてよ!」


美緒はそう言った後、白く華奢なそれを唇の間に挟んだ。







足元がフラついていた。

美緒は、哲平のライダーズジャケットの身体に手を廻し、ようやく歩いていた。
歓楽街の細道には人影は少ない。

哲平の右手も美緒の脇に添えられいて、不安定な身体を支えていた。

美緒がよろけるたびに、モッズコート越しに美緒の乳房が哲平の手に当たる。
それを避けるために、哲平がさりげなく手の位置を変えているのが分かった。

なんだかそれが妙に可笑して、美緒はクスクス笑い続けていた。


時々、すれ違うサラリーマンの酔っ払いにぶつかりそうになるのを、哲平が避けてくれた。
スレンダーな身体なのに、意外に力がある。


「お前なあ…バーボン1杯くらいでこんなになるなよっ!面倒臭えなあ!」


哲平が怒った口調で言う。
そんな哲平もいい。

美緒はケラケラと笑った。


「大丈夫、大丈夫〜…哲平がいるもん。
付き人がいるんだからあ、いっぱい酔っ払ったって平気平気!
ねね、寒〜い!雪降るかもね!」




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