名前を教えてあげる。


(哲平とエッチしたら、どんな感じかな…?)


ふと、そんな考えが浮かんでしまった。


(ヤダ!私……この頃、あんまりしてないから、欲求不満なのかな…?)


1人で赤くなった。
そんな不埒な想像をしていると知られたら哲平はこないだみたいに「馬鹿」と言うだろう。
急いで頭から追い出した。





深夜10時過ぎにもかかわらず、ファミレスの客席は半分以上が埋まっていた。


カラーコンタクトで瞳をグレーにした
『ヒュー』が率いるバンド『レボリュート』のライブは、常に満員御礼だという。


「俺がいた頃は全然違う方向性で、グラムロックとかやってたんだけどさ。俺が抜けてヒューが入ってから、毒っぽい感じになったんだな…」


夜食のサンドウィッチを前に、哲平は言った。

ソファの背に凭れるようして、相変わらず無愛想な感じだが、いつになく一重瞼の目は穏やかだった。


グラムロック、というのが美緒にはわからなかったけれど、訊いても分からないだろうから、「ふうん」でスルーした。


高校卒業後、自活しなければならなかった哲平は就職の為にバンドを脱退せざるを得なかった、と言った。

哲平は酒はよく飲むが、あまり食べない。





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