名前を教えてあげる。
[みおです♪今日のスケジュールはスーパーとドラッグストア^o^
トイレットペーパーきらしてるから、絶対買わなきゃ]
風貌に似合わず、まめな哲平はこんなくだらないメールにも必ず返信をくれた。
美緒が買い物カゴを抱えて、商品を選んでいると、携帯がEXILEのメロディを奏でる。
[トイレットペーパー大事だね。ちゃんと買った?]
メールの中の哲平は、剽軽だ。
美緒はくすっと笑う。
美緒の携帯は、教習の区切り時間ごとに送られる哲平からの短いメールを一日に何度も受信した。
ライブから10日後、哲平の休みの日に再び逢う約束をした。
朝、順はスニーカーを履いたあと「今日も帰りは遅くなるよ」と言って出掛けていった。
この頃、順の帰宅は連日午後7時を過ぎていた。予備校で自習をしているんだ、という。
具体的に何をしているのか、美緒には分からない。
同じ家に住まいながら、別世界に住んでいるような日々。
だけれど、美緒に不満はなかった。
確かに、砂の中に穴を掘るような日々だったけれど、哲平はその中で掘り当てた湧き水のようだった。