名前を教えてあげる。
呑気な哲平は放っておいて、美緒は裸のまま、急いで自分のショルダーバッグから携帯電話を取り出した。
案の定、順からメッセージが入っていた。
[どこにいるの?
積雪のせいで、電車、完全に止まっているらしいけど…
迎えに行きたいけど、タイヤチェーンないし。
友達と一緒?タクシーで帰れる?]
10分前の着信だった。
ああ、どうしよう、と美緒が独り言を言った時。
携帯電話がひょいと宙に浮かんだ。
振り返ると、哲平が美緒の携帯に文字を打ち込んでいた。
「あん!何するの!返して!」
美緒は半分本気で怒り、手を伸ばすと、
「こんなのはどう?」
哲平は、携帯の画面を美緒の目の前に突き出した。
[友達の家に泊まります☆
信頼出来る人だから大丈夫♪
心配しないでね^ ^]
「これで一晩中、美緒といられる…」
哲平は背後から美緒の髪に顔を埋めた。
「信頼出来る…っていうのは削除しちゃおうかなあ?」
美緒はクスクス笑いながら言った。