名前を教えてあげる。
「ナニ考えてんのお前?
普通、過去のそんなもん捨てるだろ?別れた男の写真なんて。
俺に失礼だと思わねえか?」
「え……やだ。それで、それどこにやったの?」
「どうしたもこうしたもねえよ。俺がどんだけショックだったかわかんのか?」
「……」
一転して逆境に立たされ、美緒は俯いた。
確かにそうだ。
ひとつ屋根の下に住む婚約者の光太郎が小箱を発見する可能性は十分予測出来たのに、処分せずにいた。
写真の中には、美緒の胸に順の手が触れているようなもっと際どいものもあったはずだ。
深い関係を想像させるものが。
「……お前が出来ねえから、俺がやってやったよ。
ビリビリに引き裂いて、橋の上から川にばら撒いてやった。
全く変なもん見せつけられてムカつく…」
「ええっ!ビリビリって、全部?」
「全部全部。
分けるのめんどくせえから、全部。
あ、ちげえわ。途中で破るのかったるくなって、川原でライターで火ぃ点けて燃やした」
光太郎は胸を逸らした。
「酷い!普通に友達と撮ったやつだってあったのに!」
家族のいない美緒は、昔の写真が極端に少ない。だから、順が写っていようと捨てられない面もあったのに。