名前を教えてあげる。
「クソガキィッ⁈調子に乗んなあ!
俺の女、風俗送りにするだとお?ぶっこきやがって、上等じゃねえか!いますぐ、ぶっ殺してやる!」
光太郎が真っ赤な顔をして、怒鳴り散らした。
「きゃあああ〜いやあ〜こわいよお!」
恵理奈がホラー映画に出てくる少女のように棒立ちになって叫ぶのを美緒は、急いで抱き締めた。
「こうちゃん、やめて!お願い!そんなに怒らないで!」
「うるせえ!」
光太郎は、荒々しい動作で流しの下の扉を空け、ガチャガチャと物音を立てる。
包丁を探しているのだ、とすぐに分かった。
美緒は恵理奈から離れ、光太郎の背にすがる。
「何するの!冷静になってよ!
変なことしたら、殺人事件になっちゃう!」
「馬鹿野郎っ!ここまでコケにされて黙っていられるわけねえだろが!
だいたいあのクソ野郎、最近、調子こき過ぎなんだよ!」
振り向いた光太郎は、鈍く光る鋼を手にしていた。
美緒の身体からさっと血の気が引き、あまりにも不用意にタケシの言動を話してしまったことを後悔した。
「タケシのいうことなんか、真に受けちゃダメだって。他人に何言われようと、私、絶対こうちゃん以外の人とエッチしないから。
誓う。絶対こうちゃんにしか美緒の裸見せないから……」
「……ックチョ…あのクズ野郎…」
光太郎は、悔しげに唇を噛み、崩れるようにその場に腰を降ろした。