名前を教えてあげる。
恵理奈の成長とともに、美緒は感謝の気持ちを強くするーーー自分にかけがえのない宝物を与えてくれた中里順に。
「…あて、あんのかよ?」
美緒の呟きを聞き逃さなかった光太郎が、美緒の目を見る。
光太郎の事を考えていたはずなのに、いつの間にか、順に思いを馳せている自分に気がつき、美緒は目を伏せた。
今、自分が触れているのは、野口光太郎だ……
……あの人は、もう過去の人。
新たに人生を歩む約束をした光太郎だけを見つめなければ。
その為に、目の前にある問題を解決しなければ。
「うん…ちょっとね…昔、お世話になった人なんだけど……ダメもとで頼んでみようかな…」
厚かましいと思われようが、今更恥なんて気にしていられない、と思った。