名前を教えてあげる。
田中みどりとの再会
5年ぶりに再会した田中みどりは、随分と痩せてしまっていた。
ボブだった髪をベリーショートにし、痩けた頬で、オレンジジュースのストローを咥える彼女は、あの『ひでりちゃん』とは別人だった。
「あんたが家出した後ねえ……
本当大騒ぎだったんだよ。
思い詰めて自殺するんじゃないかって、もう皆、真っ青。
警察に捜索願い出そうとしてたら、中里さんから連絡があって。向こうの代理人さんが出てきて、あんたのことは中里家に預かってもらう形で落ち着いたのよ。
でも、私は居心地悪い、悪い〜
一応、あんたのケア役だったから、私が至らないせいで、こんなことになったんじゃないかって、いう人いたわけ……
本当、肩身狭かったわ」
ずずず…とみどりは音を立てて、グラスの液体を啜った。
「ごめんね…みどりちゃんは一生懸命やってくれたのに……でも、あの時はああするしかなくて…」
みどりの正面で、美緒は頭を下げた。
国立大学教育学部卒という誇らしい経歴と心理カウンセラーの資格を持つみどりだけれど、どこかコミカルな容姿のせいか三田村学園の女子児童達には、ちゃん付けで呼ばれていた。
親しみ半分揶揄半分という感じで。