名前を教えてあげる。
みどりの相変わらずの謎のジョークに、美緒は(何それ……?)と思いつつ
「へへへ…」と愛想笑いをした。
「ま、一応、言っておくけど!」
みどりは背筋をしゃんと伸ばして、宣言するように言った。
「お金なら、ないから」
「……やだ。みどりちゃん、
何、いきなり」
美緒は付けまつ毛の目をパチパチさせた。
目の前に置かれたアイスティーを手に取り、ストローを咥えようと唇を尖らせた。
しかし、動揺が表に出て、折れ曲がったそれは嫌がっているみたいに逃げ回る。
チェッ……失敗したか…
心の中で舌打ちした。
なるべく上手く本題に入るのには、どうしたらいいのか、昨晩からずっと考えていて、結局、うまく考えがまとまらず、なるようになれ、と思いながらここへ来たのだ。
みどりは見透かしていた。美緒の魂胆を。
(諦めちゃだめ…
ここまで来たからには、せめて利子分の3万で良いから貸してもらう約束をしなくちゃ……
頼みの綱は、みどりちゃんしかいないんだから…)
「……ねね、私のことはちょっと置いといてえ。みどりちゃんの近況、聴きたいな!
結婚は?てゆうか、どうしてそんなに痩せちゃったの?ダイエット?」
雰囲気を和ませたくて、話題を変えた。