名前を教えてあげる。
結局、卒業したら、必ず実家に戻ることを約束させられて、大学生になった。
あんたみたいに可愛いかったから、一人暮らしのアパートに男連れ込むところだけれどさ。
中学生の頃、母親が言った
『若い男は汚らわしい欲望の目で女を見る。学生の男女交際は悪いことだ』というセリフが私をかんじからにしたんだよ。
暇は充分あったのに、4年間、一度も実家には、帰らなかった…
卒業後は、仕方なく家に戻ったけたど。
両親は相変わらず、遠巻きに私を監視している。
でも、私は養護施設の職員という仕事を得ていたから、それに没頭することにしたんだ。
それから、同じ家に住みながら、ろくすっぽ会話もないただの同居人のような生活が10年以上、続いた。
それを変えてくれたのは、皮肉にも病気だったわ。
私が癌だと知った母は
『私の命を差し上げますから。私より先にみどりを逝かせないで下さい』と言って仏壇の前で泣き崩れた。
その後ろ姿を見て、私は本当に驚いたよ。
この人は、子供の命の為なら自分を犠牲に出来る人だったんだって。
それから私は仕事を辞め、入院治療を受けた…