名前を教えてあげる。
「嫌あ……順、やめてよ…」
食料品や日用品の入った段ボールが所狭しと積まれたスーパー・マーケットのバックヤード。
美緒は腰の辺りを彷徨う順の手を軽く振り払う。
拒む言葉とはうらはらに、美緒の口元は綻んでいた。
一旦、美緒は順から一歩退いたけれど、ステップを踏むみたいにまた順に寄り添う。
今にもキスを交わしそうなほど、2人の身体は密着していた。
ずっとクスクス笑っていた。
「美緒…少しだけ、いい?」
「うん…」
順は辺りを見回し、誰もいないことを確認すると、美緒の胸をダークグリーンのエプロンの上から、そっと押すようにして触れた。
手のひらをちょうど美緒のサイズに丸めて。
俯きながら、美緒はされるがままに順の手を受け入れる。身体の奥が疼くのを感じながら。
夕方5時からのアルバイトだった。
でも、一分一秒でも長く一緒に居たくて、放課後は一目散にこのスーパーに駆け付けた。
そして、こうして束の間のデートを楽しむのが恋人同士になって2ヶ月目の美緒と順の習慣だった。
周りの目など気にしなかった。