名前を教えてあげる。


だから、このくらいしてもいいはずだと美緒は筋違いの言い訳をしてやり過ごす。

着信ランプが早く読め、とばかりに忙しなく赤い点滅を繰り返す。

メールの内容は、明後日2人で行くスノーボード旅行のことだろう。
美緒のリクエストした温泉のあるロッジの予約が取れたのかもしれない。


『最後の思い出を作ろうか?』


そう言って誘ったのは、哲平だ。


美緒は携帯を軽く睨んだ。


(あん、もうせっかちなんだから……
まだ、だめ………)


ベッドの上で哲平に言い聞かせる時のように、心の中でつぶやいた。








「うっそでしょお〜?ビックリ!
そんな事って出来たんだあ?」


ストロベリー・チーズケーキ味のアイスのスティックを手に、美緒はワンボックスカーの助手席で、目を丸くした。


「別に。出来るでしょ」


夜の高速道路を運転している哲平は、前を見たまま涼しい声で答えた。




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