名前を教えてあげる。
高校時代から、スキーやスノーボードをしていたという哲平の滑りは素晴らしかった。
ロングターンとショートターンを巧みに繰り返し、鮮やかなカービングを見せ付ける。
少しだけ足首を痛めてしまった美緒は、ゲレンデの隅っこで小さな雪だるまをいくつも並べて、哲平の滑りに拍手を送った。
午後3時頃にやっと昼食を摂った。
ホテルのブッフェ・レストランでは、季節外れとも思える沖縄フェアなるものをやっていて、ソーキそばやゴーヤチャンプルなどが用意されていた。
「ねえ。哲平は沖縄に行ったことがある?」
美緒が沖縄そばを食べたのは、初めてだった。あっさりしているが、コクのあるスープを一口飲んだ途端、美緒はその美味しさに感動してしまった。
リゾートホテル、スノーボード。
うどんとは似ているが非なる南国の麺。
少し外に出れば、色々なものに出会えるのだ。
哲平はゴーヤチャンプルを食べながら、20歳頃に沖縄で、マリンスポーツのインストラクターをしながら半年ほど暮らしていた、と告白した。