名前を教えてあげる。
シーソーゲームの終わり
それから、美緒はゲレンデにも予約していたカラオケにもいかなかった。
ずっと哲平が離してくれなくて、ベッドで過ごした。
何度も哲平と1つになった。
順からのメールを確認する暇もなかった。
スノーボードと哲平のせいで、身体のあちこちが怠かった。
隣で小さな寝息を立てる哲平の寝顔をしばらく眺める。
無防備な寝顔。
(考えてみたら、哲平は徹夜して車を運転したんだもんね…)
昼間、傷めた右足首はもう痛くない。ベッドの上でまだ張り付いている湿布をそっと剥がした。
さすがに時間が気になって、サイドテーブルに置いたシルバーのウオッチを見ると、午後10時を少し過ぎていた。
でも、もう慌てたりしない。
どんなに雪が積もろうと関係ない。最初からここに泊まるのだから。
(よいしょっ…と…)
ベッドから起き出した美緒が窓のカーテンをそっと明けると、漆黒の外の下は白い雪だけが静かに浮き上がる。
ずっと先には、リフトがあるはずだけれど、何も見えなかった。
(あっ…なんかイテ……)
背中にヒリヒリとした痛みを感じ、右手を後ろに回してさすった。
夕方、あんなことがあったせいなのか、今夜の哲平はいつにも増して激しかった。