名前を教えてあげる。
哲平は身体を起こし、テーブルに近付いた。
携帯の小さなディスプレイには、
[♪♪順♪♪]と表示されていた。
「チッ……ボケが」
恋敵からメールが届いたことを知り、舌打ちをし眉を不機嫌に歪めた。
美緒の二つ折りの携帯を奪うように手に取り、未読のメッセージを主より先に開いた。
[返信、遅くてごめん。
熱が39度まで上がり、解熱剤を飲んで寝ていた。
薬が効いて、今は37.5度。
パン食いました。今はテレビ観てる。
スノボは楽しそうだね。
俺もやってみたいな。
受験終わったし、今度、行こう。
ホッシーさんによろしく。楽しんできて。
それじゃ、お休み]
「クソが…」
哲平は、画面の赤い削除ボタンに指を押し当て、そのメールを葬り去った。
そして、ピピピ、とこなれた風に携帯を操り、住所録から中里順のアドレスを探し出すと、迷いなく発信ボタンを押した。
プープーという接続音のあと、プルルルという呼び出し音に変わる。