名前を教えてあげる。
「恵理奈はお水ね。虫歯になったら嫌だから」
「はあい」
恵理奈は素直に返事をして、水をこくこくと飲む。思い切り暴れたから、汗で前髪が濡れて束になっていた。
恵理奈は、とても聞き分けのいい子だった。
この室内遊園地はバルーン滑り台の他、コインで遊べるゲーム機や子供用の電動自動車など、多種多様な遊び道具が用意されている。
天候も気にしなくていいから、若いファミリーにはとても人気があった。
今日のような平日はそれほどでもないけれど、土日ともなると、受付には長蛇の列が出来るらしい。
今日は美緒と紀香の休みが珍しくぶつかったので、子供達は保育園を休ませた。
迷子の心配もなく、スタッフも配置されているから、親達もこうやってお喋りに興じることが出来るけれど、唯一の欠点が、料金料金が高いことだった。
飲食物は持ち込み禁止だったから、午前中から来れば、昼ごはんは、カフェでオムライスやお子様ランチを頼まなければならない。
量は少なく、たいして美味しくもないのだが、値段はファミレスくらいする。
恵理奈と1日遊ぶと3千円以上掛かる。
だから、美緒は節約のためにミネラルウォーターのふりをして、空のペットボトルに水道水を入れてきた。