名前を教えてあげる。
怖いもの見たさか、勝手に指が小さな画面を撫でる。
[Re.
ありがとう。光太郎君とは
いいキスフレになれそうだわ
(^_−)−☆ りか]
この先の2人のやりとりはない。
(はーん…人妻にもったいぶられて、光太郎はつまんなくなって、追うのをやめたんだ…あいつムダにプライド高いし…)
美緒は思う。
呆れるやら。怒りが込み上げてくるやら。なんだか悲しくなってくるやら。
いろんな感情が、腹の中で渦を巻く。
「何がキスフレよ……アホらし。光太郎も光太郎だよ。親切な男を装いつつ、下心ミエミエじゃない…」
あばずれの人妻、平井りかとやらにいいように奢らされて。
本当に光太郎は馬鹿だ。
薔薇の花束だって、相当高かっただろうに……
そう思うとペットボトルに水道水を入れて、ミネラルウォーターに見せている自分が馬鹿らしくなり、美緒の口からフッ…と笑いがこぼれた、
その時。
「……いい度胸してんじゃん」
低い声がして、美緒は、はっ!と振り向いた。