名前を教えてあげる。
「きゃあ!」
堪らず、悲鳴を上げて抵抗した。
「頭を下げただけじゃあやまったことにはならねえよ。口でごめんなさいって言え!」
光太郎は美緒の背に馬乗りになり、頭をグイグイと押し下げた。
「痛あ!やめてよ!」
男の力には敵わない。光太郎の手で押さえつけられ、セミロングの茶髪がカーペットに広がる。
光太郎がこんな風に暴力的な行為をするヤツだったなんて……
強く掴まれた肩や頭の痛みよりも、そのことが本当にショックで、いつの間にか美緒の目から涙がこぼれ出していた。
それなのに、光太郎の攻撃の手は止まらなかった。
「早く、ごめんさないって言え!
可愛げのねえあのクソガキだってごめんなさい、ぐらい言えるぞ!」
「……はあっ?」
光太郎のいう、『あのクソガキ』が恵理奈のことだと判った瞬間、美緒の心に別のスイッチが入った。
「ふっ…ざけんなよ!
そんなに私らのことが気に入らないなら、この家から出て行けよ!」
そう叫んで、覆いかぶさるような格好の光太郎を振り払った。
「いってえ!」
反動で光太郎はよろけ、壁に肘をぶつけたけれど、すぐに体勢を立て直し、逃げようとする美緒の胸ぐらをつかんだ。