名前を教えてあげる。
……そして、しばらくするとお前さんを身籠った。
婆さんに子供が出来た事を伝えると、今までの態度が嘘みたいに柔らかくなって、俺たちを祝福してくれたんだ。
それを機に紗江の横須賀の実家に同居することにして、無事に女の子を出産した。
『美緒』という名前は、紗江が名付けの本から決めた。
美しい縁、繋がり、という意味だと嬉しそうに言ってたよ。
紗江はお前さんを生むとすぐに、バレエを再開した。
それは、婆さんの希望でもあったんだ。
子供を生んだからといって夢を諦めちゃいけない、私が孫の面倒を見るからって言ってくれてな。
あの人も紗江が3歳の時に、旦那を病気で亡くしたから、娘を立派に育てるっていう意地があったんだよ。
婆さんの申し出は有難かったよ。
紗江は以前のようにまたバレエに熱中した。レッスンから帰ってくると、お前さんと一緒に風呂に入って添い寝をしていたよ。
美緒ちゃんももう少し大きくなったら、バレエやろうねって、話し掛けてたな…
会社で、昇進なんか今まで望んだことはなかったが、俺も頑張ろうと思ったよ。
………だけど、お前さんがもうすぐ1歳の誕生日って頃、悲劇が起こったんだ。