名前を教えてあげる。
「あ、マーマ!おはようっ」
美緒は驚いた。
恵理奈はパジャマではなく、ちゃんとトレーナーとGパンに着替えていた。
そして、五郎の膝に座って卓袱台に向かっていた。五郎と恵理奈は一足先に、朝食を済ませたらしかった。
卓袱台には、沢庵の小皿とハムエッグが美緒の分だけ乗っていた。
朝の情報番組が、けたたましく騒ぐ。
昨日の恵理奈は、警戒してあまり五郎に近付かなかったのに、いつの間にこんなに打ち解けたのか。
「ママあ、このお家、ヤギさんいるの!さっきね、おじいちゃんとヤギさんのお乳搾ってきたの!
あとねえ、にわとりさんもいるし、にゃんこもいるの!ミケトラは親子なんだよ!」
恵理奈がこんなに嬉しそう顔をするのを久しぶりに見た気がした。
「あ、にゃんこなら、さっき離れの二階から見たよ。トラックの下にいた…って何それ。牛乳飲んでるの?」
敏感な美緒の鼻は、恵理奈の前に置かれた白い茶碗から、ほのかな動物臭を嗅ぎ取った。
「ヤギさんのミルクだよ〜朝、おじいちゃんが搾るの、恵理奈もお手伝いしたの!楽しかったあ!あと、おじいちゃんがにわとりの卵、拾うのも見たよ!」
「この子は好き嫌いせんで、えらいなあ」
ズズッと茶碗の中身を啜る恵理奈の頭を五郎が愛おしげに撫でる。
それを見て、ふいに美緒の胸が熱くなった。