名前を教えてあげる。
自分は、肉親にこんなふうに優しくされた想い出がなかった。
祖母は、娘の死を悲しみ続け、笑顔を取り戻すことなくこの世を去った。
祖母が孫の美緒と愛情を込めて向き合えなかったのは、夭折した娘を思い出して辛かったからだ、と今なら分かる。
「さて。雅子がさっき長靴や軍手持ってきてくれたから…飯食ったら、畑に行くか」
五郎は恵理奈を膝に乗せたまま、自分の頭に白いタオルを鉢巻きにして言った。
母屋で昼飯を食べた後、五郎は再び畑に戻った。
午後からは、玉ねぎを収穫する、という。
美緒は恵理奈と一緒に母屋で過ごすことにした。
午前中、川の向こうにある畑で白菜の収穫の手伝いをした。
五郎が刈り取ったものを美緒と恵理奈が軽トラの荷台にせっせと運ぶ。
丸々と太った白菜は、結構な重さで、美緒はうっすらと汗を掻いた。
雅子が用意してくれた袖付きのエプロンと長靴や軍手は泥だらけになってしまった。
洗濯機は、勝手口から外へ出たところ、ちょうど台所の裏にあった。
洗濯の横に置かれた籠に五郎の衣類が、無造作に放り込んであった。昨夜、美緒達が使ったバスタオルも。
(1人暮らしで、汚れ物が溜まったら洗濯しているんだろうな…)
美緒は思う。