名前を教えてあげる。
さっき、暇だから美緒はパラパラとめくったけど、目を引いた記事は、最後の方に載っていた読者からの投稿『夜の営みがうまくいきません』というQA記事だけだった。


アドバイザーによる回答は『夫婦で旅行などに行き、それでもダメなら医師に相談しましょう』。


こんな雑誌にそぐわない内容に美緒は吹いたのだった。


「じゃさ、恵理奈、由美加奈のお店に行ってみよっかあ?あの子達は、まだ学校から帰ってきてないと思うけど」


雅子がやってる『よろず屋』は、ここから川沿いに歩いて10分くらいの場所にある。それでもお隣さんなのだ。

いろんなものを取り扱っているらしいから、恵理奈の靴もあるかもしれない。


買いたいものは、お菓子と恵理奈の本、あればファッション雑誌、それにカレー粉。


財布とスマホだけを持っていく。
山の中の村だけれど、道路整備はゆき届いていた。ガードレールがずっと向こうまで続いている。


秋と冬の間。
高く澄み切った青空の下、アスファルトの道を恵理奈と2人で手を繋いで歩いた。
勢いよく生い茂った草木のせいで、川の流れは見えないけれど、せせらぐ音は聞こえてくる。




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