名前を教えてあげる。
「あらあ、それなら、お金なんていいわよ。私からプレゼントさせて。国分村にようこそって!」
雅子は小さな目を見開き、招き猫のような仕草をした。
「ああん、マジ?いいの?雅子さん、ありがとう!」
美緒は身をよじって言った。
「美緒ちゃん、やめてよ、さん付けなんて。かゆいわ。雅子でいいよ!」
「呼び捨てなんか出来ないって!
じゃあ、雅子ちゃんって呼ぼうかな?」
「あああ、いいねえ!」
美緒と雅子がきゃあきゃあ騒いでいたら
「ママァ、これ!」
恵理奈が小学生向けの雑誌を見付け、持ってきた。
「ごにゅうがくおめでとうって書いてあるよ!恵理奈、来年、小学生だからこれ欲しい!」
「え?」
今、11月なのに……もうそんな春の号が出てるなんて…
美緒は雑誌を手に目を丸くした。
よくよく見ると、なんと今年の4月号だった。
「いけーん、返品するの、忘れとったわ…」
雅子が頭を掻きながら言った。
その夜から美緒と恵理奈は母屋で寝起きすることにした。
移動が面倒だし、離れの二階は少し寒い。
夜、トイレに行きたくなった時大変なので、五郎の寝起きする仏間の隣の部屋に布団を運んだ。台所、居間、仏間を除いても、部屋はまだ余っていた。