名前を教えてあげる。
恵理奈は由美と加奈と三つ子のようにして土間の隅に座り、こしょこしょと耳元で内緒話のように会話していた。
時々、何か面白いことがあったのか、きゃっきゃと笑い合う姿が微笑ましかった。
五郎もそんな孫の姿を、目を細めてみていた。
美緒も、雅子の花柄のエプロンを借りた。
「よおし、始めるか!」
「はいよ、ノブさん」
伸明が付き手になり、雅子が合いの手になる。
「そおれ!」という雅子の掛け声は微妙にコブシが回っていて面白かった。
「よおし!」
伸明が応える。
昼ご飯に食べる分を除いて、残りは手で丸めて、粉の入ったバットに並べる、という。
2升分の餅は結構な量だ。この頃には、男達は畑に行ってしまい、美緒と雅子が卓袱台を作業台代わりにして、2人だけの作業になった。
子供たちも小さな手でお手伝いをしてくれた。
「この辺りは、丸餅なんだよ」
「マルモチ…?」
雅子の言葉がすぐに理解出来ず、美緒は首を傾げた。
「関東の人は正月食べる餅は四角いもんだと思ってるでしょ?関西から西は丸餅が多いんだよ。
国分村のお雑煮は茹で餅で、醤油仕立で作るの。
具は蒲鉾と鶏肉、三つ葉、岩海苔なんか。至ってシンプル。
美緒ちゃんはどんな雑煮、作るの?」
「どんなって、えっ…と、その…」
答えに詰まり、美緒は焦った。