名前を教えてあげる。
・逡巡
「あ……」
手に取ったスマホの画面に浮き出た[光太郎]の文字に、ぎくりとした。
[美緒へ
あれから、俺もいろいろ考えた。
結論!
やっぱり美緒が大事だということ!
誤解されないよう、これからはマジに生きていく!
もういちど、俺にチャンスをくれ。
何もかもリセットして、美緒とやり直したい。
その為にも、えりな、田舎のオヤジにしばらく預かってもらえたら、と思う。
あと、タケシの借金の件。
本当あいつ、ぶっ殺してやりてえ!
俺が金返さねえって、現場で吹聴しまくってるらしい。
マジに受け取るやつもいるから。
やっぱこのままじゃ、マジい。
オヤジに金、借りれそうかな?
じゃ、いい返事待ってます!]
光太郎にしては、珍しい長文。
ようやく、事の深刻さに気付いたのかもしれない。
50万もの借金を踏み倒すなんて、人格を疑われても仕方ない。
狭い業界で、噂になれば仕事の声も掛からなくなる。
のんびり屋の光太郎が、ここまで危機感を持つのは、やはり美緒とのことを真剣に考えているからだろう。
(でも…恵理奈をお父さんに預けるっていうのはなあ…)
美緒は心の中で溜め息を吐いた。