名前を教えてあげる。
「いや、私は…ここにいる五百部美緒を訪ねて来たんです」
「えっ!あんたら、知り合いかね!」
雅子は小さな目を見開いた。
「私、施設で育ったんです。この人は養護の先生なの」
美緒が打ち明けると雅子は少し驚いた顔をしたけれど、「ああ、そうかね〜」と右手をひらひらさせて笑った。
「いやあ、美緒ちゃんの恩師かね?これはどうも。遠路はるばるこんな田舎にお越し頂いてありがとうございます〜」
「あ、どうも」
人見知りなところがあるみどりは少しだけ頭を下げ、ぶっきらぼうな口調で答えた。
「いやあ、綺麗な人が来たから、てっきり、明日のお見合いパーティーに参加する方が日にち間違えて来られたのかと。私、そそっかしいもんで〜」
雅子は頭を掻いた。
「みどりちゃんは独身だよ」
美緒が耳元でいうと、雅子は目を輝かせて、いきなり、みどりの両手を握った。
「まあっ!これはこれは。ちょうどいいわ!明日のお見合いパーティー、女性が足りんでね、先生、参加しませんかね?
あのね、私の10歳年上の兄も参加するの!健介って名前なんですが、ずっと両親の介護してたんです。
ここ3年で相次いで父が死に、母が死に、で気が付いたら、独身の42歳。鉄工所で働いてます。畑もやっておりますが、家庭菜園程度なんで気が向いたらお手伝いして下さいな!」