名前を教えてあげる。
「だめ……あ…」
身を捩りながらも美緒はリクライニングしたシートに身を預け、哲平の愛撫を受け入れた。
パッパッ…
いつの間にか前の車が進み、後ろからクラクションが短く鳴らされた。
助手席の美緒に覆いかぶさっていた哲平は渋々身を起こし、シートベルトをかちゃりとはめて、「…うるせーな」と呟いて車間を詰めた。
美緒は助手席に身体を横たえたまま、ブランケットを直して哲平の横顔を見上げる。
じんじんと疼く身体はお預けをくらって、宙に漂う。
そして前が詰まると哲平は「お待たせ」と言いながら、慌ただしくシートベルトを外して、ブランケットの中に手を差し入れる。
美緒の甘い声が狭い車内に響く。
時々、男の低い囁き声も混じり合う。
そんな不埒な行為は、進まない行列と繋がらない携帯電話のことを忘れさせてくれた。
長蛇の車の列はずっと先の方まで続いていた。車の渋滞を抜け出すまでは、まだまだ時間がかかりそうだった。
結局、川崎に着いたのは午後4時近かった。自宅アパートまで歩いて15分くらいの距離で降ろしてもらった。
「哲平、ありがと……」
美緒が言いかけた時。