名前を教えてあげる。


時計は午前1時を少し過ぎた時刻を示していた。
順は淋しげな笑みを浮かべた。


「ああ、月が綺麗だから…」


「本当?私も見たい」


順に寄り添うようにして、カーテンを開け放った窓ガラス越しに夜空を見上げた。

遥か彼方遠くの世界から愚かな美緒を見下す赤い月は、まるで傷付いた順の心そのものに見えた。


だから、美緒は謝罪をするしかなかった。涙の雫とともに。


「順…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」


「いいよ…」


ゆっくりと首を振った。
そうは言っても、24時間前のこの時刻には、他の男と婚約者が4本の脚を絡め、抱き合って眠っていた事実が、順を苦しめている。


順は頬杖をついて、ふう、と、小さな溜め息を吐いた。


「……俺は赦すよ。どんなことがあろうとも。永遠の誓いを交わしたんだ…
病める時も健やかなる時も、変わらない愛を捧げるって」


まるで、月と会話するように。


「赦すよ。どんなことがあっても。


エイエンノ、チカイヲ、シタンダカラ……」






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