名前を教えてあげる。


……そう言ったのに。


結局、順が美緒を救い出すことはなく、どこにも連れていかなかった。


朝、美緒が起きると順の姿はなかった。

いつも順が使っているトリコロール柄のメッセンジャーバッグも。プーマのスニーカーも、車も。


食卓代りのローテーブルの上に、順が身につけていたプラチナの指輪が置いてあった。


[ごめん]というメモと共に。



美緒が順と過ごした日々は、終止符が打たれた。





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