名前を教えてあげる。


やっぱり、そっか……

17歳の春。出逢った時から、順は真っ直ぐな愛を捧げてくれたのに…
それを土足で踏みにじってしまったから…
仕方ないよね…


ぼんやりと、溜め息を吐くしか出来なかった。


「総一郎様の奥様、春香様は、孫の恵理奈ちゃんを引き取りたいと申し出られましたが、順様が、生みの母親である美緒さんが養育されるのが恵理奈ちゃんにとって1番であるとの強いご希望がありました。

春香様は、あなたにご両親がいらっしゃらないことを懸念されて、順様と御意見が対立する場面もありましたが、順様が『美緒は恵理奈がいないとダメになる』と仰られまして。結局、奥様が折れました。
親権は母親であるあなた様が持つということでよろしいかと思います。
つきましては、養育費の件ですが」


男は、無表情に淡々と言葉を次から次へと並べ立てる。
婚約が破棄されるほど、順の愛情を失ってしまった事実がまだ受け入れられなくて、美緒の思考は完全に止まってしまっていた。


「はい…分かりました」


うなだれて、力なく答えるのがやっとだった。





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