名前を教えてあげる。
・亡き母の振袖、そして星空の下
国分村滞在5日目。
その夕食は、さらに賑やかなものだった。また倉橋一家が来て、ビールや日本酒が振舞われた。
今日、国分村に到着したばかりの田中みどりは、宿の夕飯があるというのに断り切れず、雅子の心づくしの手料理でもてなされた。
「先生、是非、お願いしますよ。
先生のような方が来られたら、会が華やぎますわ。軽い気持ちで構わんですけん。国分村の農業の話を聴いて下さるだけでも!」
倉橋は自分が企画した役場主催の婚活パーティーに参加するように熱心に勧めるが、みどりは、
「いえ、私は結婚なんて…無理です」
と真っ赤になって手を横に振っていた。
勧め上手な雅子の酌で、コップ半分のビールを飲んだせいで、酒に弱いみどりは、少し酔っていた。
美緒はテレビの前に陣取り、食事を味わった。
雅子はお盆片手に、台所と居間を行ったり来たりして、忙しく動く。
「雅子ちゃん、私も何かやるよ」
美緒が立ち上がりかけると、雅子は、
「いい、いい、そんな気使わんでいいけん!美緒ちゃんは食べてて!」
と強い口調で嫌がるから仕方ない。
考えてみたら、ここに来てから五郎と美緒と恵理奈の3人だけで夕食をとったのは1回だけしかない。