名前を教えてあげる。
金色の鶴の刺繍が入った帯を、雅子は可愛らしい変わり結びにしてくれた。


「すっごい!雅子ちゃん、こんなことまで出来るんだあ!」


スマホの画像で自分の後ろ姿を見た美緒は、感嘆の声をあげずにはいられなかった。

髪は自分でお団子に結い、由美と加奈が七五三で使った花飾りを貸してもらった。


「はい。美緒ちゃん。撮るよ」


伸明が美緒の前に陣取り、何度もシャッターを切る。
カシャカシャと音が響く中で、美緒は笑ったり、澄ました顔を繰り返す。

そんな姿を五郎や、倉橋、雅子が遠巻きに見守る。


「わあ、美緒おばちゃん、女優さんみたいだわ」

「本当、すごいわ。綺麗だねえ」


おませな姉妹は憧れの眼差しを向け、恵理奈は誇らしげに胸を逸らす。

五郎達の後ろには、田中みどりもいた。

そして、その隣には美緒が今日、初対面したGパン姿の男が佇んでいた。

雅子の兄、健介だ。


みどりは午前中、断わり切れず参加した合コンパーティーに出席、健介と相思相愛カップルになったのだ、と言う。

みどりよりも小柄な健介だけれど、なかなかの男前(妹の雅子とは全然似てない)でお似合いのカップルだった。






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