名前を教えてあげる。
永遠という言葉が存在しない部屋で
空には夏雲が広がっていた。
電車の窓から外を眺め、こんな日には、海にでも行った方がいいんじゃないか…と思ったりする。
隣りに座る順は顔が真っ黒に日焼けしていた。
元々、地黒の順はとても焼けやすく、夏の陽射しに1日当たれば、サーファーみたいな褐色の肌になる。
その健康的で滑らかな素肌を美緒は「日サロで焼いたの?」とからかった。
そういう美緒だって、日焼け止めオイルを塗っていたのに、白いキャミソール・ワンピースの剥き出しの肩は小麦色に焼けていた。
昨日は、夏休み初日。
順と三浦海岸へ海水浴に行った。
男の子と海に行ったのは、初めてだった。しかも2人きりで。
先週の日曜日、美緒は真由子に付き合ってもらって、横浜のファッション・ビルで、新しい水着を買った。
美緒の水着姿を順に『可愛い』と言って欲しかった。
狭い試着室で、あれこれ悩んだ結果、真由子の「それが1番いいよ」と鶴の一声で決定したのは、ミントグリーンのビキニ。
今まで、そんな大胆な水着なんて着たことがなかったけれど、
「男はビキニ大好きだからね。
アイドルのカレンダーだって、8月は必ずビキニだし」と物知り顔で真由子が腕組みしていうものだから、美緒も心を決めた。