名前を教えてあげる。
真由子の現在が知りたくて、SNSを使って探したこともあったけれど、なんの成果もなかった。
多分、真由子は、あまりいい環境に暮らしていないのかも知れない。
高校時代、真由子は下着で接客する飲食店でアルバイトをしていることを美緒に自慢していたくらいだから。
もちろん、年齢は誤魔化している、と言った。
間柴真由子がスレてしまったのは、高2の夏休みからだった。
その前はわりと普通だったのに。
美緒の知らない、中学時代の女友達と三浦海岸へ遊びに行った真由子は、その日ナンパしてきた名前もろくに知らないような男と行きずりにバージンを失ってしまった。
それをきっかけに、美緒と同じ黒いボブヘアの髪を茶色く染めた真由子は、裏の顔を持つようになる。
青果店のアルバイトを辞め、風俗まがいの仕事を始めた真由子に美緒は驚き、彼女を止めた。
けれど、既に万単位の金を手にするようになっていた真由子は、美緒をあからさまに見下すようになっていた。
『友達と一緒にやってるから大丈夫!
美緒はまだバージンだから、そういうの抵抗あるかもしんないけど、私はもう、どうでもいいし。
こういうのって若いから価値があるんだよ。
そりゃたまに口が臭いおっさんとかいるけど、そんなのちょっとの我慢。
イケメンは来ないけど、面白いお客だっているし、結構楽しいよ。
私、お金が欲しいから、多少のことは我慢するんだ』