名前を教えてあげる。
美緒の親友は真由子だけだったけれど、真由子には、美緒以外にも親友がいた。
結局、美緒は真由子に嫌われたくなくて、理解あるふりをすることを選んだ。
そして、なんとなく、真由子が自分を見下すようになったことにも薄々気が付いていた。
『美緒もやんねえ?
客はおっさんばっかりで最初はキモいけど、軽いお触りだけだから。
アソコとかは禁止だし。見せろっていう人いるけど、無理って逃げちゃえばいいし。
美緒がやってるスーパーでレジ打ちのアルバイトより倍の時給が貰えるんだよ?
友達紹介したら、私、ボーナス貰えるし。
ねえ?いいじゃん!』
真由子は何度もそう言って誘ってきたけれど、絶対に無理だった。
『ごめんね…真由子、私、出来ない』
断り続けた。
三田村学園では、許可を取れば、アルバイトは許されたけれど、給料明細の提出とその使い途ちを報告しなければならなかった。
(これがものすごく面倒だった)
そんなきわどいアルバイトが許されるはずがない。
例え、嘘をついても、変に金回りが良くなれば必ずバレる。
学園は団体生活だ。
生活の秩序を乱す規則違反者に対する罰則はとても厳しかった。
テレビ、漫画が禁止され、携帯ゲームも没収。
外出も学校以外は出来ない。
近親者との面会も制限された。