名前を教えてあげる。
テレビは、CNNをやっていた。
いかにも鉄の女といった容貌のキャスターが早口の英語でニュースを読み上げる。
もちろん、美緒にはさっぱりわからない。
順はいつも、これを見ながら朝の支度をするという。
英語のヒアリングを鍛える為に。
朝、7時に起きた。
順が部屋にあったインスタントのドリップ・コーヒーを淹れてくれて、昨日買っておいた菓子パンを2人で食べた。
一緒に夜を明かし、朝を迎えた。
小鳥のさえずりを聴いた。
順の寝息を聴き、順の寝顔を見た。
身体中が怠かった。
両足の付け根の中心に、熱い余韻がまだくすぶっていた。ブラジャーの中の先端が、ピリピリとかすかな痛みを持つ。
美緒は起き出し、トート・バッグから折りたたみのミラーを取り出して、テーブルの上に置いた。
髪を除け、首筋をなぞる。
今まで付けられたどれよりも赤く大きなキスマーク。
キスマークは首だけではなかった。
胸にも内腿にも今まで付けられたことのない場所にも。
そこは、ほのかに熱をもっていた。
一晩中、くっついたり、離れたりを繰り返した。
「やべえ…授業中に俺、寝るかも…」
家から持ってきた小さな電気シェーバーを使いながら、順は、あくび混じりに言った。