名前を教えてあげる。
『……とりあえずさ、親に話すよ。悪いようにはしないと思う…』
泣きじゃくる美緒を安心させるかのように、順は少し笑った。
そして、美緒の唇にキスをし、いつもの手順でその先もした。
不安と怖れを振り払うように。
だが、結局、順は親には話さなかった。
順の両親が、美緒の妊娠のことを知ったのは、三田村学園の園長が連絡したからだ。
昨日、学校から帰宅した美緒は田中みどりに呼ばれた。
園長室に来るように、と。
来る時が来た。
恐ろしい現実を直視しなければならない時が。
足ががくがくと震え出す。
制服のまま園長室へいくと、園長を始め、4人の職員が美緒を待ち構えていた。
大人達に囲まれ、美緒は自分が身重の身である事を白状するしかなかった。
相手は、中里順という同い年の少年であることも。
「五百部美緒さん」
白衣の看護師が近付いてきて、田中みどりが美緒の代わりに、はい、と返事をした。
「検温されましたら、こちらのカップにお小水お願いします。1/3くらいあれば、大丈夫です。
採りましたら、おトイレに小さな窓がありますから、そこ置いて下さい」